会社の給湯室

前の職場は残業が多い職場で、私はそれほど手が早くなくて、結構泊まりこみの仕事をしていました。その夜も徹夜で、同僚は最終電車で帰ってしまって、一人で夜食のカップラーメンを作りに、給湯室へ行きました。
お湯をカップに入れている時、何気なく給湯室の吸気ダクトに目を向けたのですが、ダクトにつけられたプラスチック製スリットの隙間から、音が聞こえたんです。
zangyou
給湯室が酸欠にならないように、空気が入ってくるので、冷たい風が来るんですが、目を向けた時、そのダクトの奥にヒカルものを見たのです。
一瞬で、目だと感じました。それもかなり大きな瞳のようで。思わず後ずさりしたのですが、その目は瞬きもせず、こちらを見続けているのです。
腰が抜けそうになって給湯室から出ようとしたのですが、後退りしているのでなかなか出られません。
その吸気ダクトのスリットから今度は長い黒い髪の毛が、ぞろぞろと出てきたのです。
その時点で私は多分大声を上げたんだと思います。

カップヌードルをダクトに投げて、逃げました。鞄も上着も会社に置いたまま、逃げ出して。
ポケットには小銭しかなかったのですが、コンビニで友達に電話して、タクシーでその友達の家へ。
友達に話しても、笑って信じてもらえませんでした。
翌日の昼過ぎに会社に行ったら、すごく叱られました。
そんな話、誰が信じるかと。

鍵をかけないで外出したし、企画書は間に合わないし、言い逃れするし、ということでその次の日に会社をやめました。
それ以来会社ヘは一度も行かずに辞表を送って、やりとりしました。
あの会社が求人広告出しているのを見ると、やめた誰かは、多分私と同じ体験したんだと、思っています。

HN:毎日徹夜
投稿者年代:40代
性別:男性
居住:東京都